「興信所の身元調査」

身元

興信所と身元調査

ひところはかの有名な帝国データバンク(旧:帝国興信所)でも人事調査を行っていた。

そのうち、旧:労働省(今の総務省か)等から「差別につながる身元調査はやらないで欲しい」と言われ、人事調査の廃止を宣言した。

身元調査と一口に言っても多岐にわたる。結婚、採用、取引、交際などその目的も幅広い。

現在、一般的に多く行われるのは企業からの依頼で行う「雇用調査」、いわゆるその会社が採用に当たって応募者の適性を確認する目的で依頼する。

頼まれたリサーチ会社は、依頼崎の会社から預かった履歴書に基づいて、そこに係れている学歴や職歴などの経歴をなぞっていく。中には全く出鱈目を堂々と書いてくる強者もいて、調査員を唖然とさせることもある。

これは実話だが、某探偵事務所に応募した男がいて、採用した探偵事務所は「まさか調査会社に嘘の履歴書を出すはずがない」と高をくくり即決で採用した。

自信過剰の典型的なケースである。

ところが数日して「どうも変だ」と気づく。

そこからはさすが探偵事務所である。数時間で履歴書の嘘と本人の実像を明らかにした。

その男は、氏名、生年月日、卒業校、履歴、全て真っ赤な嘘だったのである。

本名は平凡な山田太郎という名前、履歴書に書かれた名前は「御子柴蘭磨」、大学を13歳で卒業し、某大手企業に入社したようになっている。

面接して採用を決めた探偵事務所の社長は自分の軽率さを大いに反省したが、「面白い奴だ」と思い、本当のことを言えと迫った。

所長は素直に事実を認めれば続けて雇用するつもりもあったが、本人が頑として認めない。あくまでも13歳で大学を卒業したと言い張る。

名前も山田太郎は世を忍ぶ仮の名で、自分は皇室につながる家系の者だと胸を張ったらしい。

ここに至って温厚な面白がり屋の所長も堪忍袋の緒が切れ、

「馬鹿野郎!出ていけ!」

となったようだ。

これは特異なケースだが、調査をしていると虚偽の申告は結構多い。特に個人情報保護法とやらである意味において「嘘」を隠蔽可能にしているように思う。

身元調査は必要不可欠

僕は身元調査はどんな場合においても必要不可欠だと断言する。

なぜならば、後遺症が大きすぎるからである。

その昔、千代田区神田に中堅の印刷会社があり、業績もまあまあだった。しかし、ある時採用したたった一人の男が原因であっという間に倒産してしまった。

その頃は、雇用調査を行う各社が大変潤っていた時代で、調査そのものもやりやすかった。

私立の大学に行けば就職率を向上させるべく、進路指導の担当者は、訪れた調査員を下にも置かないもてなし様で、こちらが要求する前に当該学生の詳細な記録を提出してくれた。

したがって、調査員は楽々と1件の調査を終えることができた。

これは別の項で書くが、当時調査を依頼する企業が業者に払う調査料が1件当たり3~5万円の間だったように思う。

それを3等分して、3分の1が調査員の報酬になった。月に20人調査をすれば約30万の給与が貰えた。まあ、簡単に終えられることばかりではなく、遠隔地や地方だったりすることもある。

話を神田の印刷会社に戻すが、不用意に採用した男が共産党員だったため、数十人いた従業員を洗脳され、組合を作り、賃上げの要求やサボタージュを繰り返されあっけなく倒産に至ったわけである。

よく「アリの一穴」と言うが、どんなに頑丈な壁でも最初の小さな綻びからやがて取り返しの出来ない障害となる。だから企業にとっては死活問題で、いかにお上がやめてくれと言ってもやめるわけにはいかないのだ。

今はもっと働く側が強く、うっかり雇ってしまうと辞めさせるのに莫大な費用がかかってしまうし、場合によってはユニオンに絡まれ前述の印刷会社の二の舞となりかねない危険だって考えられる。

身元調査は応募者を差別するのではなく、その企業にとって必要な人材か否かを選別することが目的であり、興信所やリサーチ会社は真摯にお手伝いするだけである。

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